先日、パリのオルセー博物館に行ってきました。
日本では、美術館の主役になるような絵画や彫刻が所狭しと並んでいます。
そんな中、
「人間のような彫刻」
を見つけました。
足の指一本一本、足の裏の筋肉の盛り上がりまで、詳細に表現されています。
なんと腕には血管の盛り上がりまであります。
顔を隠すと、白塗りの人の写真かと見間違うほどです。
コンピュータも写真もなかったはるか昔に、これを掘り上げたと考えると、この精巧さや表現力には息を呑みの一言です。
モデルがいたとしても、ずっと同じ格好でいてもらえるわけでもありません。
作者の頭の中で、細部に至るまでイメージをし、そのイメージを彫刻という形で少しずつ少しずつ外部化されたのがこの彫刻です。
Contents
ピグマリオン効果(Pygmalion effect)
さて、みなさんは「ピグマリオン効果」という概念をご存知でしょうか?
「ピグマリオン効果(Pygmalion effect)」は、米国心理学者のロバート・ローゼンタールが古代ローマのオウィディウス著「変身物語」から着想し、1964年に提唱した概念です。
ピグマリオンと言う人は、神話の物語に出てくる登場人物ではありますが、この神話は私たちが現実に利用できるとても重要な概念を示しています。
変身物語の一部をご紹介
ピグマリオンという人がいました。
彼は自分の理想とする女性を思い描き、遂には精巧な彫刻を作り上げました。
彫刻を作り上げたピグマリオンは、その彫刻の女性に心から恋をしました。
遂には彫刻の女性が、人間の女性になりました。
とてもかい摘んでいますがこういうお話です。
(詳しくは変身物語を読んで見てくださいね)
ピグマリオンとオルセー美術館の彫刻
私の場合、このお話は寓話である上に、
彫刻に心から恋することができるってことがなかなか実感がわかない話でした。
想像したものを彫刻にしたからといって、彫刻は彫刻だし、動かないし、どうやったら恋焦がれる存在になるんだ?と。
オルセー美術館で、写真の彫刻を見た時、ふとこのピグマリオンの話が頭をよぎりました。
精巧に作られた彫刻を見ていると、白塗りの人に見えてきます。
顔を隠せば、触らなければ本当の人にしか見えませんでした。
「ここまで精巧に彫刻を作ったならピグマリオンは、確かに恋することができたかもしれないな」
と感じました。なるほど、だからこの神話ができたのだな、と納得できるほどに。
ピグマリオン効果から見るマインドの使い方
では米国心理学者のロバート・ローゼンタールは、このピグマリオンの神話をどういった概念で提唱したのでしょうか?
wikipediaにはピグマリオン効果のことを、
「ピグマリオン効果(ピグマリオンこうか、英: pygmalion effect)とは、教育心理学における心理的行動の1つで、教師の期待によって学習者の成績が向上することである。」
と紹介されています。
「相手を期待するイメージを持って接することで、相手はそのようになっていく」
ローゼンタールは実際に学校で実験を行い、実証しています。
成績のあまりよくない生徒のことを赴任する先生には、とても成績の良い生徒だと伝えることで、先生がそのように接し、実際に生徒の成績が上がった、といった実験です。
さてこのピグマリオン効果を私たちの生活にどのように生かしていけるでしょうか?
ここではマインド(脳と心)の使い方であるコーチングの視点から、考えていきましょう。
ゴールを思い描き設定する
私たちは、頭の中にこうなりたいという映像やイメージを持っています。
その映像やイメージが本当に自分が望むものであれば、それがゴールとなっていきます。
そうやって、バランスホイール上に設定されたいくつものゴールは、そのひとつひとつは今現実には達成していないものばかりで、その実現方法もよくわからないものでもあります。
ゴールを設定することで、向かいたい方向が決まります。
ピグマリオンにとってはそれが、理想の女性だったのでしょう。
輪郭をハッキリさせていく、アファメーションとビジュアライゼーション
ゴールを設定して直ぐは、輪郭の定まらないぼやっとしたイメージでしょう。
向かいたい方向が決まれば、その輪郭をハッキリさせていく粗彫りをしていきます。
ゴールは、実現方法はわからないものではあるのですが、
私たちは、そのゴール一つ一つが達成された世界がどんなものかを、頭の中でイメージすることができます。
そして、マインドの働きを学べる現代の私たちには、ゴールの輪郭をハッキリさせる素晴らしい方法が既に存在します。
それが、アファメーションとビジュアライゼーションです。(アファメーションとビジュアライゼーションの重要性はここではお話ししませんが、私たちが未来の向かいたい方向に向かっていくための、最も論理的な方法だと言えるでしょう。)
アファメーションとビジュアライゼーションを繰り返すことは、ゴール設定で粗彫りをした石を仕上げていくことに似ています。
そうやって頭のイメージをどんどん精巧なものに近づけていくことで、私たちはゴールへ確実に向かっていけるのです。
未来への第一歩
ピグマリオンは、「今現実にないもの」つまり「ゴール」を頭の中で思い描き、それを精巧な彫刻を作ることで外部化をしました。
オルセー美術館で見たこの彫刻は、人間のイマジネーションの緻密さを圧倒的体感させてくれるものでした。
私たちが描くゴールは、初めは荒削りかもしれません。
しかし達成した世界をイメージし、
アファメーション・ビジュアライゼーションを繰り返すことで
そのイメージを無意識がどんどん精巧にしていき、
荒削りだったゴールはどんどん明確になっていくことでしょう。
ゴールの世界を何度も体感することで、無意識がそうなる様に振る舞うのです。
人間のビジュアライゼーションは強力です。
まずは夜寝る前などのリラックスしている時間に、自分がこうなりたい、こうしたいというイメージを、自分が見ているように頭の中にイメージしてください。
そのイメージする時間が、あなたをいきたい方向に向かわす原動力となるでしょう。
最後にあなたにお聞きします。
あなたは、どんな彫刻を頭の中で掘っていきたいですか?